ギャグ漫画家 木下晋也の1コマ日めくり発売!


−−『木下晋也の1コマ日めくり』が発売となりました。タイトルの通り、1コマ漫画の載った2020年版日めくりカレンダーです。オールカラーで366日分、毎日違った漫画が載っているという力作は、どのような経緯で誕生したのでしょう?

木下晋也の1コマ日めくり購入ページはこちら

https://calendar2020.kinositasinya.com/

ツイッターで「今朝のラクガキ」という1コマ漫画を2年前から描いています。できるだけ毎日コツコツやってきてずいぶん貯まっていたところに、「これで日めくりカレンダーをつくるのはどうでしょう?」と話を持ちかけてもらえたので、じゃあぜひということになりました。描き下ろしもかなり加えましたけど、ベースはこの2年で描き溜めたものです。

「今朝のラクガキ」は、季節や年中行事なんかに合わせた漫画も多いので、カレンダーにするにはちょうどよかったんですよね。

 

−−現在も『おやおやこどもこどもこども。』『柳田さんと民話』など、たくさんの連載を持つ身。それに加えてほぼ毎日「今朝のラクガキ」を描いていくのはたいへんなことでは? 始めようと思ったのはなぜ?

 

 SNS上で日々漫画を描くことによって、自分の漫画をもっと広く知ってもらえるようになればと思ってのことです。通常の仕事の負担にならないよう、らくがきのような軽い気持ちでやろうということでタイトルを付けたんですけど、それほど楽じゃないのはすぐわかりました。(笑)

 でも続けていると、さすがSNSはすぐに反応がくるので、「なるほどこういうのがウケるのか」などと発見も多いです。

−−木下さんの漫画は「8コマ」というのが一応の基本形。でも「今朝のラクガキ」は、1コマ完結。描きにくさはない?

 

 自分の中ではとくに問題はないです。僕の場合どのネタもたいてい、思いついた時点では1コマで収まってしまうものだったりします。そのネタに肉付けして8コマにしたりしているので、1コマなら思いついたままを描けてむしろ楽な面もあるくらいです。

 

−−日々、斬新な視点やアイデアを生み出すための、方法論はある?

 

斬新かはわからないですけど…(笑)

アイデアを出すために、例えば「今朝のラクガキ」なら、よく「いらすとや」見にいって、どんなものが今の季節感を出せるかチェックします。漫画の舞台や材料のとっかかりを探す感じでしょうか。

 本や漫画を眺めたりして、言葉やシーンを借りられないか探したりもします。ひとつの単語から話を生み出すことも多いです。たとえば「断捨離」とか、卒業シーズンなら「制服の第2ボタン」とか。そこからどんなことが考えられるか、探っていきます。

 その言葉とは最もイメージのかけ離れたものをくっ付けてみるのはよく使うパターンです。断捨離なら、いちばん断捨離なんてしなさそうな人は誰かと考えてみたりするんです。

 あれこれ悩んだり考えあぐねたりしているので、意外に時間はかかるんですよ。パッと閃いて一瞬で描き上げる、とできたらかっこいいんでしょうけど(笑) 実際はそんなにすぐ思いつかないので、どうやって考えているかといえば、座ったり寝転んだり、うろうろ歩いたり。漫画や本を眺めて、手を動かしてみて、違うなと思ったらいったん洗濯もの取り込んでからにしようとか、あれこれしているとけっこう時間がかかってしまいます。

−−絵柄がとことんわかりやすいのも木下漫画の特長。描くときの留意点とは?

 

 えーと、本当はもっと上手にかければいいんですけどね(笑)

特別な事情のないかぎり、中肉中背の人を登場させますね。顔は、見分けがつく最低限の要素で描きます。目は横線だけで統一しているので、眼鏡の有無や髪型、鼻の形、それに輪郭で違いを出します。

 目を線だけで描く人って、ほかに見たことがないですね。理由ですか? 漫画を描き始めたころは、登場人物のキャラクターよりもワンアイデアでやっていこうという気持ちが強かった。ショートコントみたいな漫画をやりたかったんです。コントでは人物に役割こそあれど、それぞれのキャラクターはさほど入りません。だから自分の漫画でも、人物の個性をできるだけなくしたいと思っていて、こんな描き方になりました。

 

−−アイデア勝負で挑むというのは、たいへんな決意にも思えます。ネタが枯渇したりする心配はないのでしょうか。

 

 自分はごくふつうの感覚の持ち主で、ふだんは何も考えていない人間なんです。つかみどころがないと言われることもありますけど何も考えてないからじゃないだと思います。

ただ、笑いについての自分なりの価値観や基準が一応はあるつもりで、それはけっこう厳しいはずなんです。そこにしか自分の強みはないような気がしています(笑)

 ネタが枯れることはいまのところありませんけど、シュールでとんがったネタはちょっと前より出にくくなっている気がします。年齢の問題でしょうか。もう三児の父ですし、ちょっとどこか常識的になってきたのかもしれない。自分の好みとしてはすこしシュールな笑いのほうが好きなので、なんとかしないといけないんですが。

 

−−アイデアの素は、いったいどこで仕入れているのでしょう。

 

 いままでの蓄積でなんとかしているんですかね。がんばって貯めてきたつもりもないけれど、子どものときぼんやり見ていたものが、どこか頭の片隅に残っていたりするんでしょうか。

 学生時代は帰宅部で、早々に家へ帰ってテレビでお笑いやドラマの再放送を観たり、漫画読んだり音楽を聴いたり。いたってふつうでした。

 クラスでも目立たないほう。お笑いは好きだったけど、それをあまり表には出さないタイプでした。あ、小学生のころは漫画を描いて友だちに見せたりはしていました。流行っていた「ドラゴンボール」なんかをギャグっぽく仕立て直すような漫画でした。

 そこから漫画家になるべく一直線! というのでもまったくなく、お笑いに関わりたいという気持ちから、放送作家になることを目指して大学で放送学科に進学しました。でもそこは、ディレクターになりたいような人が中心でけっこう体育会系で、あまり馴染めませんでした。(笑)

 落語研究会に入って、舞台に上がるほうも経験してみましたが、それもあまり得意じゃないとわかった。そのまま卒業して、仕事も決まらないまま上京したんです。自分にできることが何かあるだろうかと改めて考えてみるに、最も可能性があるのはひとりで完結できる漫画かなと思い、描き始めました。そのまま現在に至るという感じです(笑)

−−ではいま、漫画に専念できる状況は幸せなこと?

 

 ほかにできることもありませんし、自分の思ったことをいちばん忠実にかたちにできるのは漫画なのかなと思うので、描いていられる状態でいるというのは、幸せといえば幸せでしょうか。

 漫画を描くことしかしていませんしね。早起きでして5時くらいには起き出して、まずは原稿を描いてます。そのうち子どもが起きてくるので、ごはんを食べさせたりと中断を挟んで、午後になるとネタを考えます。夜は19時くらいには仕事を終わりにして、晩酌したり子どもを風呂に入れたり。できるだけ規則正しくしようとしています。そうしないと描けなくなってしまいそうで怖いんですよね。

 こうやって挙げてみると、自分の生活は家族のことと漫画のことばかり。もちろんそれで満足なんですが。まあ漫画の内容も「日常」が主役ですし、自分の日常がちゃんとあることが、漫画を描き続けていくうえでも必要不可欠なのかもしれませんね。

 

木下晋也の1コマ日めくり

https://calendar2020.kinositasinya.com/