オデッセイ……6.3億ドル
フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ……5.7億ドル
映画の興行成績です。
これらに共通のこと、分かりますか?
原作付きの映画? 惜しい!
……突然失礼、コルクでマーケティンググループに所属している池田です。
実はこの2作品、小説が原作—それもネット発の小説という映画なんです。
コルクは作品の発表や告知のため、さらにはそれ以上のツールとしてインターネットも重視しています。お金はあくまで尺度の一つとはいえ、マーケティンググループとしてこのヒットは無視できない現象、少し調べてみました。
目次
オデッセイ
リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演の映画『オデッセイ』は、アンディ・ウィアーの小説『火星の人』が原作となっています。
過去にも小説を書いていたものの、出版してくれるところを見つけられなかったウィアー。そこで『火星の人』は始めからウェブサイトで連載することにしました。
その後、読者の要望によりAmazon Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)で、電子書籍として出版します。KindleはAmazon社が出版社と契約して本を出しているサービスですが、KDPは個人が(基準にのっとった上で)自由に本を出せるプラットフォームです。ウィアーも簡単に『火星の人』の本を出版できたわけです。
KDPでは値段を無料にはできず、最低でも99セントにしなければならなかったにもかかわらず、『火星の人』はベストセラーになります。その後エージェントから接触があり、印刷された本も出されることに。出版後すぐハリウッドからも声がかかって、映画『オデッセイ』がみなさんご存知の成功を収めることとなりました。
ネット上での公開からセルフパブリッシング、そして出版社からの出版、映画化と見事なサクセスストーリー見せた『火星の人』。今では珍しくもありませんが、2009年当時にネットを選んで(無償)公開に踏み切ったウィアーには舌を巻きますね。
余談ですが、コルクが契約している小山宙哉(@uchu_kyodai)さんの漫画『宇宙兄弟』が『オデッセイ』とコラボしてポスターを制作しています。小山さんらしいユーモアが見られるポスターなので、こちらも見てみてください。
フィフティ・シェイズ シリーズ
(動画は今年6月公開予定の映画『フィフティ・シェイズ・ダーカー』の予告編)
官能的な恋愛映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』から始まる「フィフティ・シェイズ」シリーズも、E L ジェイムズによる同名小説が原作です。
実はこの小説には前身があります。ジェイムズは、映画化もされたヴァンパイアものの超人気小説『トワイライト』のファンでした。この作品の登場人物を取り上げ、ファンによる小説を集めたサイトに公開した「Master of the Universe」という小説が、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の原型となったのです。
この小説は性的描写への配慮から著者ジェイムズ自身のサイトに移され、その後、『トワイライト』とは関係ない形に書き直されて電子版とオンデマンド印刷で出版されたのが「フィフティ・シェイズ」シリーズとなります。
官能的で過激な描写の多いこのシリーズ、レジを通す必要のない電子書籍という形態も相まって、若い女性を中心に、口コミによって人気を博し、そして映画化へと至ります。
電子書籍というメディアの特性が活きて広まったというところが、新しい時代の出版だなと思わせられますね。
同じネット発の、でも対照的な2作品
『オデッセイ』、「フィフティ・シェイズ」シリーズともに、ウェブサイト上の小説から始まり、人気映画にまでなった「ネット発の成功作」ですが、対照的な2作品でもあります。
上の通り、『オデッセイ』原作の『火星の人』は、はじめから独立した小説として発表されましたが、「フィフティ・シェイズ」はファンフィクションを出自とします。「趣味を同じくする人たちで見せ合う」というファンフィクションの性質から、こちらのヒットは、様々なものの距離が0になったネット時代では頷けるパターンです。
むしろ興味深いのは、読者層が絞られず、よってどれだけの人に届くか全くわからなかった『火星の人』の成功かもしれません。
2作品は、著者によるSNSの使い方も対照的です。
『オデッセイ』のアンディ・ウィアー。
https://twitter.com/andyweirauthor
フォロワーが3万人近いアカウントですが、あまり積極的な活動はされていないようです。
一方で「フィフティ・シェイズ」のE L ジェイムズは数日と間をおかずにツイートしており、Instagramも盛ん。60万フォロワーを超える人気アカウントです。
https://twitter.com/E_L_James
https://www.instagram.com/erikaljames/
面白いですね。2つのヒット作ですがその背景は大きく異なっています。
ファンコミュニティの中から生まれ、多くの味方がいる状態から始まった「フィフティ・シェイズ」シリーズ。
渾身の作品を作り上げ、それに世界中が驚愕した『オデッセイ』。
インターネットで作品を発表するという方法には正解はなく、いろいろなやり方がありなんです。インターネットが発展し、そしてそれを当たり前とする世代が増えてくることにより、これからも様々な方向性でのヒット作が生まれてくることでしょう。
最後に宣伝ですが—
クリエイターのエージェンシーであるわたし達の会社コルクでは、クリエイターもスタッフもインターネット上での発信力を非常に重視しています。
しかし、その影響力を「どのように活用できるか」という点については、まだまだ手探りの段階です。この手探りを手伝ってくれる方、むしろ積極的に仮説を立て検証できる方、積極採用中なので、ぜひコミュニティプロデューサーに応募してきてください!
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http://recruit.corkagency.com/mid/
募集職種を詳しく説明した記事はこちらです!
(池田 @KitaitiMakoto)